脊柱管狭窄症とは
背骨のなかの管が狭くなって脊髄が圧迫される
脊柱管狭窄症とは、その名のとおり腰部の背骨のなかの神経の通るスペースである脊柱管が狭くなり、その結果、馬尾神経や神経根が圧迫されて、痛みをはじめとするさまざまな下肢(足)の症状や、会陰部の症状が現れる病気のことです。
中高年に起こる頑固な足の神経痛(いわゆる坐骨神経痛)やしびれの大部分はこれによるものです。もちろん、頸部(頸椎)や胸部(胸椎)の脊柱管狭窄症もありますが、障害を受ける神経の部位が異なるため、症状はかなりちがったものになります。
また、頸部から腰部にかけて広範囲にわたって脊柱管狭窄症が起こる例もあり、これは広範脊柱管狭窄症とよばれて、症状は多彩となり、重症の例が多くなります。
神経が圧迫されるとどうなるか
脊柱管狭窄症によって下肢に出ていく神経が圧迫されても、かならずしも痛みやしびれなどの症状が起こるとはかぎりません。
しかし、多くの場合多様な症状が現れます。では、脊柱管の神経が圧迫されると、なぜ痛みやしびれなどの症状が見られるのでしょうか。
神経が圧迫されると痛みやしびれが起こるのは、単に圧迫という刺激だけが原因ではありません。神経には血液が流れていて、栄養や酸素を運んで神経を養っています。
神経が圧迫されるとそこで血液の流れが悪くなり、神経に酸素が十分に供給されなくなります。酸素の供給が減ると、神経の間で信号のやり取りを行っている神経伝達物質のはたらきが悪くなり、それが痛みやしびれという症状につながると考えられています。
その結果、立つ、歩く、走るというような足の機能に障害が出てくるわけです。
末梢の神経の場合、神経内部の血管と外部の血管にはたくさんのバイパスがあるので、1、2か所で圧迫されても外部から十分に血液が供給されます。
ところが、脊髄や馬尾の神経には外部から酸素を供給してくれる血管がないので、圧迫されるとすぐに血流が悪くなり、また神経伝達物質のはたらきにも影響して、神経機能が障害されたさまざまな症状が現れてくるのです。
腰部脊柱管狭窄症は増えているか
腰部脊柱管狭窄症の大部分は腰椎の加齢変化が原因となっています。
腰椎部の脊柱管は年齢とともに狭くなります。
これは程度の差はありますが、例外なく起こる腰椎の加齢変化です。
脊柱管が狭くなると、そこを通る神経は慢性的に圧迫される状態となり、腰から足にかけての痛みやしびれを出すことになるわけです。
よく言われる「年をとると坐骨神経痛が出やすくなる」というのは、このような誰にでも起こる腰椎の加齢減少によるものなのです。
ということで、中高年に起こる坐骨神経痛のほとんどはこの腰部脊柱管狭窄症によるものなのです。したがって、高齢者の人口が増えるとともにこの病気も増えてきています。